幸福な帰路 あたしはあなたに会う。しかも何度も。この先何度も。 暗い階段を下りて雑貨屋を出ると、日が沈んだ直後だった。日が沈む最後の一瞬の美しい光が まだ建物に残っている。この瞬間だけ。扉を出て、一歩進んだ所で、その輝きはまるで無かった かのようにすっきりと消えた。あとはすべて闇になる。けれども街のそこかしこにともるランプ のおかげで、完全な闇にはならないのだった。リリーはこの時間が好きだ。夜の初め、この明る い夜が。 気づかないうちに、雑貨屋からの帰り道はいつも幸せなものになっていた。思い返せば、店主 となんとなくうちとけて来て、雑談をしはじめるようになってからだ。それからはこんな寒い冬 の夜でも、家まで少しの歩く距離が嬉しい。余韻にひたれるから。 店主のことを異性として意識しているとはまだ言い切れない。 でもこれから先も、ずっと会えたらなぁと思う。明日も、あさっても。会って話しがしたい。 今はただ、そう思っているだけ。 仲良くなってきたころ。興味の持ち始めの時のなんだかワクワクする気持ちをかけたらなーと。 こういう時が一番幸せな気がする。 (03/11) |